大学院入試の極意を妄想で語る

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源義経は12世紀の日本で活躍したとされる武将である。

源義経『やうやう大学受験のこうじが癒やされそめきといふに、また新たなる戦ひ始まりにけり。』

(引用:天草多郎『毎日数学源義経編』1295年)

源義経も言っているようにまた新たな戦いが始まろうとしているので、大学院入試*1のコツを語っていこうと思う。現在私は大学3年生なので院試を受けたことがないのだが(過去問もまともに解いていない)、院試テクニックみたいなのが大学受験ほど広まっていないこの現状では、私の妄想レベルの情報でも僅かに役に立つのではないかと考える。

線型代数学の問題では行基本変形を多用すべし

院試では必ずと言っていい具合に、多元一次方程式の解に関する問題が出題される。(多元数理なので)

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画像1(2022年度 名大 多元数理 1日目 第1問)

そこで絶対にやってはいけないのは解を文字で置いて愚直に計算することである。

いくつかこういう問題を解いたのだが、愚直に計算した場合ほとんど計算が合わない。一方、行基本変形を用いて計算すると6割くらいの確率でそれらしい答えが出てくる。(困ったことに誰も解答を載せていないどころか市販の赤本みたいなものも存在しないので実際にあっているかどうか確認することは不可能である。)

行基本変形のように計算量を軽減する方法を大学数学で教わったのだから、そういうスキルをフルで使わないとバカみたいな計算をすることによって不正解になってしまうような問題が多く出題されている気がする。多分。

任意の知識を前提として解答すべし

「中学受験では方程式を使ってはいけない」「大学受験ではl'Hôpitalの定理*2を使ってはいけない」等のように、習ってはいけないことを使ってはいけないという“ローカルルール”からは我々は逃れることに成功した。

したがって、大学院入試ではある程度の主張は利用しても問題ないと考えられる。限られた時間の中で、「この主張は証明なしに使ってもいいだろう」とある程度割り切ったプレイングをするのは大学院入試のみならず大学受験でも通用する技術である。(そもそも、採点者は数学をゴテゴテにやっている50代のガチプロであるため、どんな主張でも自明に思えてしまい証明無しでもある程度点がもらえるらしい[誰によって?])

例えば下のような問題では、ℝのØでない連結な閉集合は[a,b],[a,∞),(-∞,b],(-∞,∞)の形しか存在しない!と割り切ることが大事なのである*3。他の問題も解いて、時間が余ったら使った主張を示すのがセオリーなのである。

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画像2 (2019年度 名大 多元数理 午後の部 第2問)

微積の問題は一つ捨てるべし

大学院入試は大学数学の知識をどれだけ持っているかを確認する場であるが、その確認方法が「知識があったら簡単に解けるけど、知識がないと計算地獄」みたいな問題を出題するという性格の悪いやり方である。行けそうな問題もいざ手を動かしてみると普通に地獄みたいなことが特に微積ではよくあるので1問捨てて残りの問題を頑張るしかない。

下の問題は⑴から地獄で⑵は大地獄である(解けなかった)。⑶は普通に解けた。こんな感じで、同じ大問ならきちっと誘導が整備されているなどという“大学受験の常識”に囚われることなく自由な発想を持つことも大学院入試では重要である。

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画像3 (2019年度 名大 多元数理 午後の部 第3問)

ちなみに(1)の答えが

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となったんだけれども本番でこれ出たら多分泣く。

複素関数位相空間の問題は必ず取るべし

今まで大学院入試は「計算が地獄である」ということをメインに話をしてきたが、複素関数位相空間に限っては別である。複素の問題では大抵留数定理を使えれば完答できるし、位相の問題は定義さえ知っていればもうOKである(場合が多い)。こんな感じで、複素関数位相空間は唯一のオアシス *4といっても過言ではないのでここで落とすとちょっときつい。

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オアシス。古代エジプト語のwḥʾtが語源とされる。ドイツ語では「オアーゼ」のように発音する。

大学院は授業も少なく、働かなくていいらしい[誰によって?]ので、修士時代が人生のオアシスになることを期待して院試勉強を頑張りたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:大学院には、修士課程,博士課程,専門職学位課程の3種類があるが本項では主に修士課程、それも名古屋大学大学院多元数理科学研究科前期博士課程に限って話をするので、それ以外の場合に適用できない極意が存在する可能性があr

大学院受験 - Wikipedia

*2:l'Hôpitalの定理ではなく、Bernoulliの定理と言った方が適切なように思える。というのも、l'Hôpitalの定理を発見したのはBernoulliだというのが現在の通説だからである。

ヨハン・ベルヌーイ - Wikipedia

*3:ちなみにØが連結かどうかは決まっていないらしいのでどっかの独裁者が決めてくれませんかね…

連結空間 - Wikipedia

*4:オアシス(Oasis)とは砂漠・ステップなど乾燥地域における緑地のことである。また本稿のように、疲れをいやし、心に安らぎを与えてくれる場所のことを「オアシス」と表現することもある。

oasis(オアシス)の意味 - goo国語辞書